休むのはあの世に行った時
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大須観音は名古屋を代表するお寺である。その門前町の大須は、今はとても賑わっているが、以前は閑散とした街であった。
私は中学校時代、大須にあるお寺の住職であった某先生の私塾に通っていた。塾が終わってから大須の町をぶらぶらするのが楽しみで、その頃ラジオ制作やアマチュア無線にはまっていたことから、当時の「ラジオセンターアメ横ビル」の中を見て歩くのがおもしろかった。ジャンク品やトランジスタ、ダイオードなどが雑然と積まれ、一種独特の雰囲気を醸し出していた。
さて、大須観音は正式には北野山真福寺宝生院といい、真言宗智山派別格本山の寺院である。日本三大観音のひとつに数えられ、創建は1333年。後醍醐天皇の時代に遡る由緒正しいお寺なのである。その55代貫主であられる岡部快圓さんは当院の患者様でもあるが、70歳を過ぎた今もなお、毎日休まず精力的に活動されておられる。
先日、お忙しい中『素敵なビジュアルライフ』のインタヴューにお応えいただいた。素晴らしいお話を伺う中で、「お休みは取られないのですか?」とお尋ねしたら、「休むのはあの世に行った時にでも」と笑って答えられた。毎日忙しくて休む間もないなあ、と溜息ついていた自分が恥ずかしくなった。
岡部さんを見習い、一日一日を大切に精一杯生きて、十分やりきった後、あの世でちょっと一服でもしようかな、と今は思っている。